元学校司書のおぼえ書き

学校図書館のこと 本のこと そのほか思いつくまま

中高生に推したい歴史に強くなる小説

小学校から中学校に移動したばかりのとき

中学生の図書館利用が

小学生と比べてあまりにも少なくて

張り合いをなくしてしまいました


そんな中で

司馬遼太郎歴史小説にはまって

目を輝かせて借りていく子どもが居て

こちらもはりきって図書館に置いていなかった

司馬遼太郎の著作を注文しました


自分も高校生のときに司馬遼太郎にはまって以来

歴史好きになり今に続いています

今の政治に続く明治維新の歴史を

知ったことで政治にも深く興味を持つようもなりました


世界史の方はマンガから入りました

ベルサイユのばら」でフランス革命

オルフェウスの窓」でロシア革命

この2つのマンガを中学生のときに読んだことで

世界史というものに興味が出て

拒否感なく学校の世界史の授業を聞けるようになったと思います

子どもに薦めると「絵が無理」とか言いますが

一度読みだすと「やっぱり面白い」と言って最後まで読んでくれます

どうして「絵が無理」なのか私にはさっぱりわかりませんが…

 

後に司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読んだ時

オルフェウスの窓」を読んでいたので

日露戦争におけるロシアの状況が少しはわかっていて

より理解しやすかったです


司馬遼太郎については

日本を美化しすぎていると言う人もあって

最近評価が分かれているようですが

読みやすくて面白くなければ

多くの人には読んでもらえません

 

私史上、NHKの大河ドラマで最高に面白かったのは

司馬遼太郎原作の「花神」でした


以前週刊誌に

司馬遼太郎が1冊の本を書くためには

多くの人が動いていて

資料集めだけで2千万円くらいかかっている

と書いてあっていてその額に驚きました


今は図書館のアーカイブ化と公開が進んで

以前よりは資料を集めやすくなっているかもしれませんが

歴史小説を書く、ということは

とてつもなく大変な作業なのでしょう

その作業を経て面白いところだけを読者は享受できる

有難いことだなと思っています


明治維新期に強くなる司馬遼太郎の本


明治維新から日露戦争までの日本の歩みを知ると

「奇跡」という言葉以外出てきません

わずか40年足らずで

斜陽していたとはいえ大国と互角に戦えるまでの

近代国家を作り上げた

しかも、後の戦争とは違い

最初からどうやって戦争を終わらせるかという

見通しを持って戦争に臨んでいた


自分の人生も終盤に入ってきて振り返ってみると

30代までは「青春だったな」と思います


その「青春」を命がけで真剣に国造りに捧げた若い人たち

奇跡のような明治維新をなしとげました


だからこそ、この明治維新期の歴史小説

高校生の時の自分に響いたのだなとも思います


やはり中高生には鉄壁のこの2冊をまず薦めたいです

実際には両方とも長い小説なので2冊ではないのですが

入り込めたら面白いのであっという間に読んでしまえると思います


竜馬がゆく

坂の上の雲


日露戦争は日本が勝利した訳ですが

敗戦したロシア艦隊について描いた

吉村昭の作品に「海の史劇」があります

こちらも合わせて読むとよりいっそう理解が深まります

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鹿児島 

日露戦争 連合艦隊司令艦長 東郷平八郎生誕の地


これらの本に加えて

西郷隆盛大久保利通を描いた「翔ぶが如く」と

高杉晋作を描いた「世に凄む日々」を読めば

明治維新に相当強くなるでしょう


何年か前、高杉晋作を生んだ山口県の萩に行きました

萩は趣があり、人が親切な美しい街でしたが

関ヶ原の戦いで負けて追いやられた外れ

といった感じの予想以上に狭く低い土地で

この地からよくも高杉晋作やら木戸孝允やら伊藤博文やら

曹操たる人物を出したものだと長州藩の凄さを改めて感じたのでした

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萩 松下村塾


自分が個人的に好きな

司馬遼太郎作の明治維新期の小説は

日本の軍神「大村益次郎」の生涯を描いた「花神」と

蘭学医「松本良純」と弟子の「伊之助」の話、「胡蝶の夢」です

読みながら「面白すぎる」とつぶやいてしまった2作です


司馬遼太郎は歴史上の人物像を作り上げるのが

本当に上手いと思います

司馬遼太郎の作品を読むと

作り上げたイメージ以外では

その人物を想像することが出来なくなってしまいます


数年前靖国神社に初めて行ったのですが

境内に大村益次郎銅像がありました

銅像が高すぎてよく見えなかったのが残念でした

 

司馬遼太郎の作品の中で

1番繰り返し読んでいるのがこの「花神」です

司馬遼太郎の作った人物像の中で

自分が1番好きなのが大村益次郎なのだと思います

 

この「花神」に、シーボルトの娘イネが登場します

大村益次郎は軍神として知られていますが、元は医師であり

イネは一時期、大村益次郎の元で医師になる勉強をしたのでした

大村益次郎と恋仲だったという説もあります


吉村昭の「ふぉん・しいほるとの娘」を合わせて読むと

面白いでしょう


今日は吉村昭永井路子の小説や歴史漫画や

イタリア史の塩野七生についてなど

もっと書こうと思っていたのですが

司馬遼太郎明治維新期についての作品だけでずいぶん長くなってしまいました

この次のブログで又続きを書きたいと思います