元学校司書のおぼえ書き

学校図書館のこと 本のこと そのほか思いつくまま

学校図書館におきたい選挙の絵本

先日、選挙の街頭演説の様子を

テレビで見ていたら

聴衆に向かって

「今回の選挙戦は本当に厳しいです」

と訴えている方がいて

前後のことばが切り取られていたのかもしれないけれど

なんだか引っかかってしまいました


聞きたいのは政策

他の政党の批判でもなく

今まで成果をあげてきたことでもなく

これから

どうしたら社会がよくなっていくのか

本気で考えているのが伝わってくることば


でも、自分もえらそうには言えない

私は真剣に考えて

考え抜いて

投票する人を選べているのだろうか


東京の国分寺市での

全国で投票率1位を目指した

取り組みがテレビや新聞で紹介されていました


候補者の実績や政策に加え

市議会で過去に現職の議員が

どのような質疑をしたかなどを

データベース化し市民が見られるようにしたそうです


発起人は20代の方

若い人がこのような活動を主導してくれていることを知って

社会は少しずつ良くなっている

という気持ちになれて嬉しかったです

自分よりずっと後に生まれた人だけれど

尊敬します


2016年に選挙権が18歳にひきさげられました

そのとき

小学生でも読める選挙について書かれている本がないか

探していたところ

加古里子さんの絵本「こどものとうひょう おとなのせんきょ」

復刊ドットコムさんから再販されました


 


絵本の登場人物は大勢の子ども

公園の使い方について争いが起こり

多数決で決めようという風に進んでいくのですが

テーマがけっこう深い

多数決は民主的な決め方なのか

大勢の人が賛成していることが正しいのか

 

登場人物の名前も雰囲気も昭和ど真ん中のお話

ではありますが

シチュエーションは今の子どもにも共通するもの

読み聞かせをすると聞き入ってくれます

小学校3年生くらいから中学生に

読んでもいい絵本だと思います


だいぶ前のことですが

小学校のあるクラスで多数決をとっているのを

偶然に見たことがあります

そのとき、選択肢は5つほどあったと思います

どの選択肢にも票が入ったのですが

担任の先生が

「大事なことなので

多数決で1番になったものと2番になったものの

どちらが本当にいいのか

みんなで意見をだしあって

そのあとで

もう一度決をとりましょう」

と言っておられ、

丁寧な指導をされるなあと、ちょっと感動してしまいました


ツイッターやSNSで大多数をしめる意見が

「たった一つの揺るぎない正義」というように一人歩きしていくのを

見ていて怖い時があります

 

村上春樹さんが2009年に

イスラエルでスピーチをしたとき

大勢の人からイスラエルに行かない方がいい

と言われたので行くことにした

というようなことをおっしゃっていました

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100人中99人が白と言っても

自分で本当に白かどうか考える力

自分が正しいと思ったら黒と言う勇気

誰かから借りてきた意見ではなく

大多数の人が言っているから正しいと思うのではなく

自分で考える力


その力を生み出す

それが

文学が存在している

一つの意義でもあるはず


私の父は思春期に戦争を体験した世代で

志願して予科練兵となりましたが

戦後、戦中に作り上げたアイデンティティ

崩壊し、精神のよりどころを求めて

終生、彷徨っているような人でした

それが私の家に暗い影を落としていました


私が思春期だった頃

私は知りたかった

なぜ戦争があったのか

なぜ戦争に志願するのか

 

そんな時

角川文庫の巻末にあった

「発刊の辞」を読みました

涙があふれてきました

今でも、あ、これ角川文庫だ

思うと、後ろからめくって読んでいます


掲載されていないものもあるのですが

まだお読みになっていなかったら

いつか一度、お読み頂ければと思います

 

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