漫画で読む、平和でない国に生まれるということ
2007年、カンヌ国際映画賞で審査員賞を受賞したアニメーション
「ペルセポリス」の原作漫画ⅠとⅡ

イラン人女性 マルジャン・サトラビの自伝的漫画であるペルセポリス
1979年 10歳の時にイラン革命が起きる
両親の親しい友人や 親族が
投獄されたり 処刑されるのを目の当たりにする
その後、イラン・イラク戦争を経て
日ましに自由が奪われていく国でサトラビの身を案じた両親は
サトラビを単身オーストリアへ留学させる
アイデンティティを求めて19歳でイランへ一時帰国する前までの
思春期の心の揺れや 異邦人としての葛藤を
激動のイランの情勢を背景に
切れのある言葉とイラストで描いた重量のある漫画である
30カ国以上で出版された
残念ながら 日本では2巻までしか出ていないが
フランスでは4巻まで発刊されているらしい
現在はフランスに在住し アニメーション作家として活躍している
年がばれるが
イラン革命が起きたのは 私が中学生の時だった
革命部隊によるアメリカ大使館の占拠と人質事件のニュースが
連日流れていたのを鮮明に記憶している
このアメリカ大使館の占拠の前に
サラトビの友達がアメリカへ移住している
漫画の中に、これでもうアメリカへの移住はかなわなくなったという
セリフが出てくる
当時 ニュースで外側から見ていた出来事が
作者の子ども時代を通して内側から語られるのを読み
大変興味深かった
この漫画を読んで
数年前に読んだ「帰還」という本を思い出した

この「帰還」の作者ヒシャーム・マタールの父は
リビアの外交官だったが、反体制の運動家で 身の危険を感じて
エジプトに亡命してカイロで家族と暮らしていた
作者がロンドンの大学で学んでいた1990年
父親が行方不明になる
後にリビアの秘密警察に拉致され
リビアの刑務所に投獄され、拷問を受けていたことがわかるが
その後の消息がわからなかった
まずこの本を読んで驚いたのは
亡命先にまで追手がやってきて拉致されるということが
1990年、この現代で起こっていたという事実だった
作者の兄も 学生時代に学校を出た後をつけられ、拉致されそうになったのを
機転を利かせて回避している
リビアは現在も内戦状態にあり 政府も2つに分かれている
外務省によると危険レベルは最も高い4で、ただちに避難するよう勧告が出ている
このような情勢の国で
いったいどれだけの人が どれくらい苦しんでいるのか
想像もつかない
この「帰還」の前に彼を有名にした作品が
自分の半生に重ね合わせて描いた
「リビアの小さな赤い実」だ

翻訳は金原瑞人さん